医療現場で接待漬け 高級料亭、キャバクラ…一晩10万円

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医療現場で接待漬け 高級料亭、キャバクラ…一晩10万円
9月2日8時1分配信 産経新聞


 ■業者、熾烈販売合戦 医師から要求も

 業界で企業再編が相次ぎ、販売合戦が熾烈(しれつ)化する医療機器メーカーや製薬会社。警視庁が先月、国立身体障害者リハビリテーションセンター病院(埼玉県所沢市)をめぐる汚職事件を摘発し、医師と業者との癒着の一端が明らかになったが、人の命を預かり、高い倫理が求められる医療現場は、一方で商売っ気むき出しの企業倫理に常にさらされている現実もある。不正の温床となっている接待攻勢などの生々しい実態が、関係者の証言から浮き彫りになった。

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 「公立病院の医師相手に金額が大きかったときは一晩で10万円。食事のあとキャバクラを2軒はしごした」

 こう証言するのは製薬会社で医療情報担当者(MR)の経験を持つ30代男性。彼は信越地方の中核都市にある支店に配属され、病院回りを担当。「接待相手の医師は病院でも力を持った人なので、安い所には連れて行けない」と、1人2万円は下らない高級料亭などが選ばれた。

 MRの本来の仕事は、先端の医薬情報などを医師に伝え、効果的な治療につなげるとともに、自社製品の納入にもつなげていくことにある。しかし、医師に食い込むには営業努力が必要。診療終了後の大病院で、医師にコンタクトを取ろうとするMRや医療機器会社の社員が列をなすのは珍しい光景ではない。

 過激な接待攻勢は過去に何回も社会の激しい批判を浴びてきた。平成3年には、医療現場へのリベート支給を禁止するための独占禁止法改正も行われている。企業側も倫理指針を作成するなど努力する一方で、医療機関が個別訪問を禁止する例も増えている。

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 だが、合併・買収が相次ぐなど、食うか食われるかの激しい競争をしている製薬・医療機器メーカー。過去ほどではないにせよ、相手が国公立病院か民間であるかを問わず、涙ぐましい接待する例はあとを絶たないのが現実だ。

 今回の事件の摘発のあとも医療現場からは…。

 「講演や原稿執筆を依頼し、その報酬として現金を渡すことにしている」(医療機器メーカー社員)

 「昆虫好き医師が『カブトムシが欲しい』というから採りにいった」(MR)

 「職場の忘年会や花見は機器メーカーや製薬会社がセットしてくれる」(東京都内の民間病院医師)

 「学会発表で使う何万円ものスライドを医療機器メーカーが用意し、学会への旅費も出したことがある」(埼玉県の民間病院医師)

 「医師側が納入の見返りを求めることもある」「今回の事件にヒヤッとした。自分も捕まりかねない」といった声も出ている。

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 厚生労働省は「接待を受ける側が公務員の場合は法律で禁じられるが、国として民間病院を含む医療機関全体への指導はしていない。業界団体に任せている」(医政局)という。

 製薬会社でつくる医療用医薬品製造販売業公正取引協議会は「公正競争規約で不当な金品提供は制限している。接待や歳暮は社会儀礼の範囲ならば認められる」というスタンスだ。

 医療ジャーナリストの長田昭二さんは「医者の体質にも問題がある一方で、企業も競争に勝つにはやめられない事情がある。悪しき慣例をやめれば、製薬や医療機器のコストが下がることにもつながる」と指摘している。

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【用語解説】国立リハビリ病院汚職事件

 医療機器納入をめぐって、販売会社「ヤマト樹脂光学」から現金60万円を受け取ったとして、警視庁捜査2課は8月18日、収賄の疑いで、国立身体障害者リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)の元部長、簗島謙次容疑者(63)を逮捕した。元部長は業者側に眼科の医療機器や消耗品の納入の際、発注情報を漏らしていたとされ、捜査2課が実態解明を進めている。

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